M&Aを成功させるために、財務・会計は非常に重要な要素のひとつ。ここではM&Aにおける財務の重要性や、理想の売却を行うための基礎知識・考え方について解説しています。ぜひ、隅々まで目を通しておきましょう。
財務会計とは、投資家・債権者といった企業外部への情報提供を目的とした企業会計のこと。自社の財政・経営状況を明らかにし、利害関係者の意思決定に寄与するための情報です。似た言葉に管理会計がありますが、こちらは経営者が自社の経営状態を把握し、企業内部を管理・意思決定をするための会計方法となります。
M&Aにはデューデリジェンスというプロセスがあり、これは譲受企業が譲渡企業について調査すること。デューデリジェンスにはいくつかの種類がありますが、譲受企業が買収の判断をする際には、財務・ビジネス・法務の3点が重視されます。
その中のひとつである財務デューデリジェンスは、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフローといった情報をもとに、財務の視点から譲渡企業の経営状況をチェックするもの。これはM&Aにおける買収価格を決定するベースとなる調査で、買収監査までに両者で共有されていた情報に対して実態に乖離が無いか確認し、現状のリスク特定や将来的な損益・キャッシュフローの予測を行います。
財務会計で把握されるのは、過去3期分の決算書および直近の試算表。これらを参考に、財務状況と事業実績をチェックします。とくに譲受企業が注目するのは売上高・営業利益となるため、収益が期待できる黒字状態が理想的。株式譲渡の場合は、負債額とその内容についても重視されます。
M&Aが破談になってしまう最大の要因は、デューデリジェンスまでに両者で共有されていなかった事実、特に企業価値に負の影響を与える業績や資産・負債情報や事業の存続に関わるリスク情報がデューデリジェンスで発覚することにあります。
デューデリジェンスで初めて発覚した悪材料に対して、譲受企業は何かしらの対策を講じる必要があり、買収価格の調整や事前の是正を求められたり、場合によってはそもそもM&A実行ができないという判断に至ったりする可能性もあります。
業歴を有する優良企業は、その長い歴史から、何かしら問題を抱えてしまうことも少なくありません。他方、事前に共有されていれば解決できる問題もたくさんあり、悪材料に関しても事前に共有し、どのように解決していくか両者で協議する必要があります。
できるだけ良い条件且つ高値でM&Aを成立させるために、譲渡企業が気をつけたいのは「買い叩かれるリスク」。
譲渡企業の中にはできるだけ高値で売りたいがために、自社の事業拡大がピークアウトする寸前まで譲渡をしたくないと考えている企業もいます。ピークアウト寸前の伸びしろの無い事業に対する譲受企業の評価は厳しくなりやすく、場合によっては買い叩かれてしまう可能性もあります。従って、良い条件でM&Aを成立させるためには、伸びしろがまだまだある、事業が拡大している段階でM&Aを検討することが大切です。
こういったリスクを回避するためにも、M&A前にしっかりと財務を改善し、企業価値を高めておくことが大事。譲受企業に「ぜひ買い取りたい!」と思わせるような状態にしておくことが理想と言えます。
ABNアドバイザーズ株式会社/澤田氏
財務とM&Aのプロに力を借りよう
M&Aが完結するまでには3ヶ月~1年ほどの時間を要するため、その間に財務状況が悪化すると、成立が難しくなる恐れがあります。とくにM&Aにおけるデューデリジェンスでは、公認会計士・税理士といった専門家が財務のチェックを行うことがほとんどです。売却のタイミングを見極めることも重要ですが、より良い条件で売却を実現させるためにも、財務のプロフェッショナルに現状の把握・改善をまかせるのもひとつの手段と言えるでしょう。