財務諸表とは、会社の利害関係者に向けて会社経営の状況を正しく伝えるための一連の書類を言います。書類の中でも特に重要な2つが貸借対照表と損益計算書。貸借対照表とは「会社の財布の中身」を示した書類で、損益計算書とは「一年の儲け具合」を示した書類です。どちらも深堀りすれば難しい書類ですが、大きなイメージとしては、各世帯の預金通帳や借入明細、家計簿などに似ているかもしれません。
ここでは、財務諸表の目的や具体的な内容について詳しく解説しています。
財務諸表とは、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、附属明細表などを言います。これらのうち、特に重要性の高い貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3種類を指して「財務三表」と言われてます。
詳しくは後述しますが、財務諸表の主な目的は、年間の利益を正しく算出し納税金額を確定するため(税務会計)、投資家や債権者などの利害関係者に対し、会社の財務状況を正しく伝え、適正な投資判断や融資判断を仰ぐため(管理関係)にあります。
仮に財務諸表に虚偽の内容が記載されていた場合、国は適切な税金の徴収が出来ず、脱税行為が認められた場合はぺなりてぃーが発生します。また投資家や債権者は正しい情報に基づく投資判断をすることができません。このような事態は「粉飾決算」として、過去にもたびたびニュースなどで話題となっています。
なお会社からの財務状況の報告については、金融取引法が適用される会社と会社法が適用される会社があります。具体的には、上場企業を含め一定の条件を満たした会社には金融取引法が適用され、それ以外の会社には会社法が適用されます。
金融取引法が適用される会社の財務諸表は上述の通りですが、会社法が適用される会社では、財務諸表ではなく「計算書類」と呼ばれる一連の書類を提出する形となります。「計算書類」は、貸借対照表、損益研鑽所、株主資本等変動計画書、個別注記表などで構成されています。
財務諸表を作成する目的は、上述の通り「投資家や債権者などの利害関係者に対し、会社の財務状況を正しく伝えること」です。以下、財務諸表の目的について、会社の利害関係者ごとに詳しく確認してみましょう。
投資家とは、主に株主や社債保有者を言います。投資家は、その会社が投資に値する会社かどうか(成長性のある会社かどうか)を判断するための材料を求めていますが、直観や噂に頼って投資することができない以上、財務諸表を重要な投資判断の書類の一つに位置づけています。
債権者とは、主にその会社に融資をしている金融機関のこと。の会社の返済能力を判断する材料の一つとして、財務諸表は重要な書類の一つとなります。
また、融資を打診された金融機関や融資先を探している金融機関(将来の債権者)にとっても、財務諸表は重要な判断材料の一つとなるでしょう。
自社の経営判断(選択と集中など)のため、財務諸表は重要な情報源となります。
取引先においては、以後の取引を継続して問題ないかどうかの判断材料として、従業員においては、以後も会社で働き続けて良いかどうかの判断材料として、それぞれ財務諸表をチェックすることがあります。
税務当局では、納税に関する計算に誤りや虚偽がないかを確認するための材料として、財務諸表を確認しています。
以上の通り、財務諸表を必要とする利害関係者は多数存在します。これら利害関係者に対して会社の財務状況を正しく伝えるために、企業の経理課や監査法人、公認会計士等が、法令にのっとった正しい財務諸表を作成し公開します。
損益計算書(P/L)とは、会社の一会計期間の利益を記載した書類です。売上から費用を差し引いてた利益のほか、利益の発生原因なども分かりやすく記載されています。
具体的な記載項目は次の通りです。
「売上高-売上原価」で算出します。一会計期間の売上高から、その期間に売った商品製造やサービス提供にかかった費用を差し引いた利益になります。
「売上総利益−販売費及び一般管理費」で算出します。「販管費及び一般管理費」とは、人件費や水道光熱費、消耗品費、旅費交通費など、仕入原価とは異なるものの事業運営には必要となった費用を言います。
「営業利益+営業外収益−営業外費用」で算出します。「営業外収益」とは、本来の事業以外で生じた収益(受取利息や配当金など)を言い、「営業外費用」とは、本来の事業以外で生じた費用(支払利息や支払配当金など)を言います。
「経常利益+特別利益−特別損失」で算出します。「特別利益」「特別損失」とは、固定資産や有価証券を売却または購入した際に生じる入る一時的な収益・費用を言います。
「税引前当期純利益−法人税、住民税及び事業税(±法人税等調整額)」で算出します。税引前当期純利益から法人税や法人住民税、法人事業税などの税金を差し引いた最終的な利益です。
貸借対照表(B/S)とは、会社の財布の中身を記載した書類です。会社が持っているすべての資産(お金以外も含む)、およびその資産を取得するために調達した資本と負債の内訳が分かりやすく記載されています。
記載項目は、大きく次の3つに分かれます。
貸借対照表は、借方(左側)と貸方(右側)に分けて数値が記載されていますが、このうち左側に記載されている全ての項目を「資産」と総称します。
資産の構成項目は、流動資産、固定資産、繰延資産の3種類。さらに固定資産は、無形固定資産、有形固定資産、投資その他の資産の3種類に分かれています。
会社が保有する全資産のうち、どの程度の金額を何に使っているのかを明らかにする項目が、貸借対照表の「資産」と考えて良いでしょう。
貸借対照表の中で、貸方(右側)の上部に記載されている項目をまとめて「負債」と総称します。
負債の構成項目は流動負債と固定負債の2種類。流動負債とは事業を運営するために必要な債務(買掛金、支払手形、未払金等)と1年以内に返済しなければならない借金のことで、固定負債とはすぐに清算する必要のない債務と、1年以内に返済しなくてよい借金のことを言います。
返さなければならない債務がどれだけあるのか概要的に知ることのできる項目が「負債」です。
貸借対照表の中で、貸方(右側)の下部に記載されている項目をまとめて「純資産」と総称します。
純資産の構成項目は、株主資本、評価・換算差額等、新株予約券の3種類。基本的には、株主資本が純資産の中心となります。
調達した資金の内返済する必要のない資本と、これまで事業で生み出してきた利益/損失の合計のことです。
キャッシュフロー計算書とは、会社のお金の流れに着目して経営を分析するための書類です。詳しく分析することで、会社の現状や戦略、経営者の意志など、さまざなことを知ることができます。
キャッシュフロー計算書は、主に次の3項目で構成されています。
会社の事業で生じたお金の流れを示す項目です。値が高ければ高いほど企業は事業でお金を生み出していることになり、低ければ低いほど事業運営により資金が外部に流出していることになります。
会社の設備投資や余剰資金の運用などの投資活動におけるお金の流れを示すものになります。値が高ければ資産の売却により資産整理・効率化を図っていると判断され、値がマイナスである場合は将来の成長に向けた投資を行っていると判断されます。
資金調達と返済の流れを示す項目です。値が高ければ高いほど、返済しているお金よりも、借入や社債で調達している資金のほうが多いことを示します。逆に値がマイナスの場合には、調達した資金よりも返済しているお金のほうが多いことを示します。
財務諸表には、分析目的に応じた5つの分析手法があります。それぞれの概要を確認してみましょう。
営業利益と自己資本を比較するなどし、会社の稼ぐ力(収益性)を分析します。
主に貸借対照表を用い、会社の支払い能力や倒産リスクなどを分析します。
主に貸借対照表や従業員数などの情報を基に、会社の生産性の高さを分析します。
売上や経常利益など、主に損益計算書の項目を時系列で確認し、企業の成長性を分析します。
主に売上高や期首・期末平均売上債権などを確認し、資本回転の効率性を分析します。