採用資金という言葉の意味はそのままで「人員・人材の採用にかかる費用・資金のこと」です。ここで一つ注意すべきなのは、採用にかかるものだけではなく採用後にかかる費用までを考える必要がある点です。人材不足や最低賃金の引上げなどにより年々採用資金として必要な金額は高騰傾向にあり、場合によっては資金繰りを圧迫し資金ショートリスクに繋がりかねないような事例も増えています。特に「採用後に資金繰りが厳しくなるケース」が多いので、注意が必要です。
採用資金の準備が甘く、採用するまではよかったものの採用拡大後の人件費増加に資金繰りが耐えられず、苦しくなるケースが増えています。そうならないためには、以下のようなポイントに注意することをおすすめします。
採用を行ったあと、その採用した人員がいつ頃一人前の仕事をこなせるかというのは業種・企業によって大きく異なるでしょう。売上に対して人件費が重複してしまう期間、つまりトレーニング期間はどれくらいの想定であるかを押さえ、そこまでを見据えた採用資金の準備が必要になることを改めて認識しておきましょう。「どの時点で計算できるようになるか」と、「それ以降どの程度の期間でトレーニング期間の投資分を回収できるか」という2点の見通しが立てられていればよいでしょう。
採用後に企業風土や仕事が採用した新人と合致せず、辞められてしまうリスクがあります。辞められてしまうと、その人員にかかった採用コスト、教育コストは全て無駄になってしまい、代わりに新たな人員を採用する余力が無くなってしまう可能性もあります。
厚生労働省の公表によると、2020年における離職率は14.2%となっており、採用しても一定程度は辞めてしまうことを考慮して、採用コストの予算組をするべきでしょう。
採用し人員を増やすと、それに伴って増加するコストは給料だけではありません。 従業員に対しては、社会保険に加入する義務があり、社会保険料の半分は雇用主である企業が負担することとなっています。
また福利厚生として、出勤交通費、出張費や交際費、大きなもので言うと将来定年が訪れた際の退職金等、給料以外に想定しておかなければならないコストがいくつかあります。
意外と実施していない企業も多いですが、資金繰り表を作成して管理することはとても重要です。どの時期にいくら必要になるのかの見通しを付けて、実績と対比しながら管理すると資金ショートリスクをいち早く認識することが可能です。採用においても同様で、一連の採用活動にかかる費用をあらかじめ試算し、資金残高の推移と共に確認しましょう。そのうえで資金の不足が見込まれる場合には、事前に資金調達などの手当てを考えておきましょう。