多くの経営者が頭を悩ませる資金繰りは、会社経営における最重要ポイントです。ここでは中でも建設業の資金繰りについて、その特徴や資金調達手段などを解説していきます。どのような調達手段があるのかを知っておくことで、苦しい時の選択肢が増えますのでぜひチェックして下さい。
建設業はモノを仕入れて消費者に販売するような分かりやすいビジネスモデルではなく、実施する工事の進捗度に応じて工事代金の入金が発生します。一方で建材の仕入や人件費は発生したタイミングで支払うことが多いので、その入金・支払のタイミングや時間差によっては苦しいシーンが生まれることもあるでしょう。工事代金は着手金・中間金・完了時点の3回に分けて回収することもあれば進捗度に応じて毎月請求するなど、工事内容や相手先によってその回収サイトは変わってきます。1件1件の案件金額も非常に大きい事が多いため、工期が延びたり、見積もり以上の費用が発生したりと、一つ歯車が狂うと大きな資金ショートリスクに繋がりかねません。
ある程度利幅のいい工事案件が出てきたとしても、繋ぎ資金がなければ受注できないこともあるでしょう。そのため建設業において可能性のある運転資金の調達方法について、しっかりと事前に知っておくことをおすすめします。
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、中小企業に寄り添った融資制度やベンチャー企業向けの融資などさまざまな支援制度が充実しています。また、制度によって異なりますが無担保・無保証や低利子などの条件で融資が受けられることもありますので、資金調達需要が発生した際にはまず日本政策金融公庫に相談してみるのもよいでしょう。創業して間もない場合やこれから起業する場合などでも借り入れができる可能性がありますので、さまざまな企業におすすめできる資金調達方法です。
金融機関からの借入ができるのであれば、選択肢の一つとして検討してもよいでしょう。特に地域に根付いた地銀や信金などは、地元企業に対する支援を積極的に行っていることがあります。金融機関にも与信判断があるため企業の損益状況や財務状況、返済までの見通しがしっかりと固まっていなければ融資を受けることは難しいですが、比較的低利で調達できるというメリットもあります。また、ある程度業績が好調な段階で借入をし、返済実績を作っておくとその後の融資も受けやすくなることがあります。
ファクタリングは売掛金(売上債権)を売却して資金化する調達方法です。例えばA社から3か月後に工事代金の入金がある場合、3か月を待たずして債権を売却することで、額面から手数料を差し引かれた金額を受領することが可能です。金融機関からの借入利率に比べると手数料率は高くなってしまいますが、売上債権の回収可能性が高い場合には容易に資金化できるため金融機関借入よりも調達しやすい方法となっています。
M&Aは企業の買収や合併を表す言葉であり、一般的には株式譲渡や事業譲渡のことをいいます。資金調達という意味合いにおいては事業売却による売却代金や、第三者に経営権を譲渡することで親会社となった先からの借入を起こすなどさまざまな選択肢があります。また、完全に譲渡をせずとも増資や一部株式の譲渡など経営への関与を受け入れながら安定化を図る「広義のM&A」も資金調達における選択肢として存在します。
建設業は受注金額が非常に大きな金額となる案件が多く、着実に工事を進めていくためには短期的なものも含めた資金繰り管理が最重要です。まずは資金繰り状況をしっかりと見極め、どのタイミングが資金的に厳しくなるのかを把握したうえで資金調達方法の模索を行うようにしましょう。資金繰り管理は経営者の重要な仕事ですので、現状と見通しを確実に押さえておいて下さい。