キャッシュフローとは直訳すると「お金の流れ」という意味であり、その意味の通り企業活動におけるキャッシュがどう増減しているかの流れのことを示します。これを営業活動・投資活動・財務活動の3つに区分し、どこでどうキャッシュの増減が生じたかを表にしたものがキャッシュフロー計算書であり、上場企業においては作成が義務付けられています。
企業経営の業績を示す書類で「財務三表」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。企業の一定期間における「儲け」を示す損益計算書、一定時点における「財産状況」を示す貸借対照表、その2つの間をお金の流れの観点で繋ぐキャッシュフロー計算書の3つが財務三表と呼ばれ、一般的に企業の業績状況を確認するにあたって最初に見る資料となっています。損益計算書だけを見ていると資金状況が分かりませんし、貸借対照表だけを見ていると「なぜ現金が減ったか」が明確には分かりません。そのためこの2つの財務諸表の関係性を前提に、「なぜキャッシュが増減したのか」を明確に示せるキャッシュフロー計算書は、資金繰り管理においてとても重要なのです。
直接法とは、現金収入や現金支出を、用途に応じて、営業活動によるもの、投資活動によるもの、財務活動によるもの、それぞれ3つのカテゴリーで集計してキャッシュフロー計算書を作成する方法です。キャッシュフローを正確に計算できますが、集計し作成するのに労力と時間を要します。
間接法とは、損益計算書と貸借対照表をもとにキャッシュフロー計算書を作成する方法です。損益計算書の税引前当期純利益の金額から、キャッシュフローを計算するために必要な貸借対照表の勘定の増減を加えたり除したりすることで計算します。直接法に比べて集計し作成するのが容易ですが、キャッシュフロー計算書は精緻ではなく簡易的なものになります。
引用元:中小企業庁ウェブサイト(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2009/54.htm)
キャッシュフロー計算書は大きく3つに分けることができます。
・営業活動によるキャッシュフロー
・投資活動によるキャッシュフロー
・財務活動によるキャッシュフロー
3つのキャッシュフローを見るときのポイントを解説します。
営業活動によるキャッシュフローは、本業の収益など営業活動によって獲得したキャッシュフローを示す区分となっています。損益計算書に出てくる企業全体としての損益である税引前当期純利益からスタートし、設備投資に関連する減価償却費を考慮しながら事業活動によって発生した販売・仕入に関する債権・債務の変動などを踏まえたキャッシュフローを分析することができます。キャッシュフロー計算書を見るにあたってはまずこの営業キャッシュフローがプラスになっているかマイナスになっているかで、事業が新たな資金を生み出しているのかを知ることができます。
投資活動によるキャッシュフローは、主に設備投資に関する支出などを示す区分となっています。建物や設備など消耗品ではない固定資産を購入すると、一括で費用として処理されるのではなく耐用年数に応じて減価償却費を計上していくことになります。従って損益計算書上は少額な費用で計上されていても大きな金額を支払っている可能性があります。また、有価証券や保険などといった投資資産についても同様で、「損益計算書上は費用とみなされず、貸借対照表上で計上・処理される現金収支」がこの投資キャッシュフローとして表示されることになります。
財務活動によるキャッシュフローは、主に貸付金と借入金に関する収入・支出を示します。企業の多くは金融機関から借り入れを行ったり返済したり、場合によっては他社や経営者に対して貸付をしていることもあるでしょう。そういった場合の資金増減も損益計算書には表れませんから、貸借対照表上の増減で認識しておく必要があります。営業キャッシュフローがプラスで財務キャッシュフローがマイナスの場合、本業で獲得した利益で借入金の返済(もしくは貸付金の支出)を行っている、などと分析ができるため、営業キャッシュフローとは区分して表示されています。
「黒字倒産」という言葉もあるように、損益的には儲かっているけどお金がなくて倒産してしまうという、言葉だけを聞くとなぜ?となるような状況も実在します。このような状況を避けるため、しっかりと期間損益と財務の状況を把握しながらキャッシュフローを把握することはとても重要であり、その増減要因の分析まで行っておく必要があります。安定的に事業を継続していくために、キャッシュフローを理解したうえで資金繰りを適切に把握・管理するよう努めましょう。